三回も婚約破棄された小リス令嬢は黒豹騎士に睨まれる~実は溺愛されてるようですが怖すぎて気づきません~
7
キールが言っていた上流貴族のパーティーの日がやってきた。ヴィオラはメイドたちにドレスを着せられるといつもより入念に化粧を施され、髪型も華やかにされている。ハーフアップにされた髪の毛には美しい宝石が散りばめられた髪飾りが付けられている。
(こ、こんなにめかしこむことなんて今までなかったからまるで自分が自分ではないみたい……!)
メイドたちは口を揃えて可愛い可愛いとべた褒めするが、ヴィオラは自分の姿に違和感すら感じてしまう。
(それにしてもドレスを沢山買ってもらって新調までしてもらって……普通の騎士様ならここまでのことできないと思うのだけれど、英雄ともなるとやはり違うのかしら)
すごいなぁなどとぼんやり鏡を眺めていると、ヴィオラの部屋のドアがノックされる。
「ヴィオラ、支度はできたか?」
「は、はい!」
カチャリ、とドアが開いてキールが部屋に入ってきた。キールはいつも屋敷にいるときは白いワイシャツにスラックスというラフな格好だ。仕事に行くときは騎士の制服に身を包み、スタイルの良いキールは何を着ても似合うと思っていたのだが。
パーティーに出るとあっていつもの騎士の制服とは少し違う、明らかに素材が上質で戦うための服ではない礼服姿になっていた。胸元には国王から戴いた英雄の証である勲章が輝いている。
そのあまりの美しさに思わずヴィオラはほうっとため息をついてキールを見つめていた。そして、ドレス姿のヴィオラをキールもまた両目を見開きほんの少し頬を赤く染めて見つめていた。
「キール様、どうです!可愛らしいでしょう?キール様の瞳の色と同じ色のドレスもぴったりです」
メイドの一人がどや顔でそう言うと、ヴィオラはそういえば、とキールの瞳を見つめる。
この国では社交の場に出るときに、夫が愛する妻に自分の瞳の色と同じ色のドレスを贈ることがある。それは他の男性を牽制するためと言われており、その夫婦はとても仲が良いという証でもあった。
(まだ婚約者風情、しかも契約結婚の私なんかになぜ瞳の色と同じ色のドレスを……?周りの方に勘違いされてしまう)
不思議そうに見つめるヴィオラに気づいたキールは、こほんと咳払いをして口を開いた。
「俺の瞳の色のドレスを着るのは納得がいかないかもしれないが、俺たちの仲を疑われないためだ。俺の魔力放出の発作を抑えるためだけに君と結婚したと周りに思われれば君が社交の場に出たときに居場所がなくて辛いだろう。俺と仲が良いと思われればそれだけ君の立場も安定する。俺の都合で一緒にいてもらうんだ、これくらいはさせてほしい」
申し訳なさそうに言うキールを見て、ヴィオラは心の中にぽかぽかと暖かいものが生まれるのを感じていた。自分のためにキールがこんなにも考えていてくれたなんて思ってもいなかったため嬉しくて仕方がない。
それと同時に、なぜかほんの少し寂しい気持ちも生まれていた。キールが瞳の色のドレスを贈ってくれたのはただ自分の身を案じただけで、自分に好意を持ってくれたわけではないのだ。
(そんなの当然のことなのに、私ったら何を勝手に寂しいなどと思ってしまったのかしら……私はあくまでもキール様の魔力放出の発作を止めるために側にいるのだから。勘違いしてはいけないわ)
「ありがとうございます、キール様」
「あ、ああ……」
胸の内を隠してヴィオラは精一杯の笑顔をキールに向けてお礼を言い、キールはそれを見てまたほんの少し顔を赤らめながら目をそらして頷いた。
(こ、こんなにめかしこむことなんて今までなかったからまるで自分が自分ではないみたい……!)
メイドたちは口を揃えて可愛い可愛いとべた褒めするが、ヴィオラは自分の姿に違和感すら感じてしまう。
(それにしてもドレスを沢山買ってもらって新調までしてもらって……普通の騎士様ならここまでのことできないと思うのだけれど、英雄ともなるとやはり違うのかしら)
すごいなぁなどとぼんやり鏡を眺めていると、ヴィオラの部屋のドアがノックされる。
「ヴィオラ、支度はできたか?」
「は、はい!」
カチャリ、とドアが開いてキールが部屋に入ってきた。キールはいつも屋敷にいるときは白いワイシャツにスラックスというラフな格好だ。仕事に行くときは騎士の制服に身を包み、スタイルの良いキールは何を着ても似合うと思っていたのだが。
パーティーに出るとあっていつもの騎士の制服とは少し違う、明らかに素材が上質で戦うための服ではない礼服姿になっていた。胸元には国王から戴いた英雄の証である勲章が輝いている。
そのあまりの美しさに思わずヴィオラはほうっとため息をついてキールを見つめていた。そして、ドレス姿のヴィオラをキールもまた両目を見開きほんの少し頬を赤く染めて見つめていた。
「キール様、どうです!可愛らしいでしょう?キール様の瞳の色と同じ色のドレスもぴったりです」
メイドの一人がどや顔でそう言うと、ヴィオラはそういえば、とキールの瞳を見つめる。
この国では社交の場に出るときに、夫が愛する妻に自分の瞳の色と同じ色のドレスを贈ることがある。それは他の男性を牽制するためと言われており、その夫婦はとても仲が良いという証でもあった。
(まだ婚約者風情、しかも契約結婚の私なんかになぜ瞳の色と同じ色のドレスを……?周りの方に勘違いされてしまう)
不思議そうに見つめるヴィオラに気づいたキールは、こほんと咳払いをして口を開いた。
「俺の瞳の色のドレスを着るのは納得がいかないかもしれないが、俺たちの仲を疑われないためだ。俺の魔力放出の発作を抑えるためだけに君と結婚したと周りに思われれば君が社交の場に出たときに居場所がなくて辛いだろう。俺と仲が良いと思われればそれだけ君の立場も安定する。俺の都合で一緒にいてもらうんだ、これくらいはさせてほしい」
申し訳なさそうに言うキールを見て、ヴィオラは心の中にぽかぽかと暖かいものが生まれるのを感じていた。自分のためにキールがこんなにも考えていてくれたなんて思ってもいなかったため嬉しくて仕方がない。
それと同時に、なぜかほんの少し寂しい気持ちも生まれていた。キールが瞳の色のドレスを贈ってくれたのはただ自分の身を案じただけで、自分に好意を持ってくれたわけではないのだ。
(そんなの当然のことなのに、私ったら何を勝手に寂しいなどと思ってしまったのかしら……私はあくまでもキール様の魔力放出の発作を止めるために側にいるのだから。勘違いしてはいけないわ)
「ありがとうございます、キール様」
「あ、ああ……」
胸の内を隠してヴィオラは精一杯の笑顔をキールに向けてお礼を言い、キールはそれを見てまたほんの少し顔を赤らめながら目をそらして頷いた。