三回も婚約破棄された小リス令嬢は黒豹騎士に睨まれる~実は溺愛されてるようですが怖すぎて気づきません~

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「ディーニー様……」

 目の前に立っていたのはキールではなく三人目の元婚約者でヴィオラの大食いに耐えられないと婚約破棄を告げてきたディーニーだった。

「なぜお前がこんな所にいる?社交の場にいるなんて場違いも甚だしい」

 ふん、と鼻で笑うディーニーの横には、見知らぬご令嬢がディーニーと腕を組んでヴィオラを見つめていた。艶やかな金髪に色白で美しい顔立ち、何より守ってあげたくなるような儚さを醸し出しており、自分とは対照的なその姿にヴィオラはほんの少しだけ胸が痛む。そのご令嬢がヴィオラを見ながら口を開いた。

「もしかしてこの方が噂の?」
「あぁ、小リス令嬢だ。今日は食べ物を持ち歩いていないんだな。それにひとりぼっちでなぜこんな所にいる?あぁ、そうか、例の婚約者がどうせ大食いのお前に呆れていなくなったか」

 ディーニーの嘲笑うかのようなの顔をヴィオラはただ黙って見つめるしかない。

「確か次のお相手は黒豹騎士様だったか。いつも無愛想で黒づくめ、感情がなくて慈悲の心もないと評判の騎士様が相手じゃそりゃ愛想も尽かされるだろうな」

 その言い分にヴィオラは納得がいかない。なんだか黒豹騎士様の噂がさらに悪く肥大している気がする。

「キール様はそんな方ではありません!私のことはいくら罵倒しても構いませんが、キール様のことを知りもしないのに悪く言うのはやめてください」
「はぁ!?なんだその態度は!?大食いしか取り柄のないみみっちい女のくせにいっちょまえに婚約者を庇うなんて。どうせお前に庇われたところでその婚約者もありがたいなんて思わないだろうがな」

 ヴィオラの態度が気にくわなかったのだろう、ディーニーはムキになってヴィオラへ食って掛かる。さらにヴィオラへ罵声を浴びせようとするディーニーだったが、ディーニーの隣にいたご令嬢が後ろを見て何かに気づき慌てて腕をひく。
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