三回も婚約破棄された小リス令嬢は黒豹騎士に睨まれる~実は溺愛されてるようですが怖すぎて気づきません~
10
キールは酔って寝ているヴィオラの頭を自分の膝の上に寝かせ、馬車で自分の屋敷に帰ろうとしていた。道が悪いのか馬車の揺れは大きいが、ヴィオラが起きる気配は全くない。
頬を赤らめて幸せそうにすやすやと寝息を立てているヴィオラの頭を、キールは優しく撫でていた。髪飾りがあると寝づらそうに思えて髪飾りをそっと外すと、崩れた髪からフワッと優しくフローラルないい香りがする。
(いつもは甘い菓子パンの匂いだが、今日は菓子パンを食べていないから不思議な感じがするな)
ヴィオラが倒れそうになり咄嗟に抱き止めた時、思っていたより遥かに細い体つきで驚いたことをふと思い出す。あんなにも食べ物を常に摂取しているのに、それでも体を維持することが精一杯だということだ。食べ続けなければ魔力は枯渇し体を蝕んでいく。食べ続けなければ体重も減り続け骨と皮だけになってしまう、そんな危険と隣り合わせのままずっと生きているのだ。それをわかろうともせずただただ大食いだと非難する元婚約者の男を思い出してキールは腹が立っていた。
そして何より、大食いだと非難されてもなお、自分自身のことよりもキールのことを庇おうとしてくれたことに胸が熱くなる。この小さくて可愛い婚約者のことは絶対に守らなければならないと強く思った。
ふわふわの髪の毛を優しく撫でながら、キールはヴィオラのすべすべな頬に視線を落とす。普段ほとんどを怯えるようにして自分を見て来るので怯えさせないようにと気を遣っていたつもりだったが、その怯えたような瞳は閉じられており今がヴィオラをじっくり見る絶好のチャンスなのではないかと思う。
(あまり意識して見ていなかったが肌はすべすべなんだな。唇も小さいがほんのり赤くて可愛らしい。この小さな口があんなにもたくさんのものを食べているのだから不思議なものだ)
ヴィオラの頬に優しく触れ、そのまま唇に少し触れると柔らかさに思わずどきりとする。化粧のせいなのかお酒のせいなのか唇が薄く色づいていて魅力的だ。じっとヴィオラの顔を眺めながらいつの間にかキールはヴィオラに顔を近づけていく。そのままキールの唇がヴィオラの唇に触れそうになって、キールは我にかえった。すぐに顔を離すが心臓の鼓動が異常に速くなっていてうるさい。
(俺は今、一体何を……)
自分の行動に混乱しながらキールは片手で口元を覆い、高鳴る鼓動が落ち着くことを願うばかりだった。
頬を赤らめて幸せそうにすやすやと寝息を立てているヴィオラの頭を、キールは優しく撫でていた。髪飾りがあると寝づらそうに思えて髪飾りをそっと外すと、崩れた髪からフワッと優しくフローラルないい香りがする。
(いつもは甘い菓子パンの匂いだが、今日は菓子パンを食べていないから不思議な感じがするな)
ヴィオラが倒れそうになり咄嗟に抱き止めた時、思っていたより遥かに細い体つきで驚いたことをふと思い出す。あんなにも食べ物を常に摂取しているのに、それでも体を維持することが精一杯だということだ。食べ続けなければ魔力は枯渇し体を蝕んでいく。食べ続けなければ体重も減り続け骨と皮だけになってしまう、そんな危険と隣り合わせのままずっと生きているのだ。それをわかろうともせずただただ大食いだと非難する元婚約者の男を思い出してキールは腹が立っていた。
そして何より、大食いだと非難されてもなお、自分自身のことよりもキールのことを庇おうとしてくれたことに胸が熱くなる。この小さくて可愛い婚約者のことは絶対に守らなければならないと強く思った。
ふわふわの髪の毛を優しく撫でながら、キールはヴィオラのすべすべな頬に視線を落とす。普段ほとんどを怯えるようにして自分を見て来るので怯えさせないようにと気を遣っていたつもりだったが、その怯えたような瞳は閉じられており今がヴィオラをじっくり見る絶好のチャンスなのではないかと思う。
(あまり意識して見ていなかったが肌はすべすべなんだな。唇も小さいがほんのり赤くて可愛らしい。この小さな口があんなにもたくさんのものを食べているのだから不思議なものだ)
ヴィオラの頬に優しく触れ、そのまま唇に少し触れると柔らかさに思わずどきりとする。化粧のせいなのかお酒のせいなのか唇が薄く色づいていて魅力的だ。じっとヴィオラの顔を眺めながらいつの間にかキールはヴィオラに顔を近づけていく。そのままキールの唇がヴィオラの唇に触れそうになって、キールは我にかえった。すぐに顔を離すが心臓の鼓動が異常に速くなっていてうるさい。
(俺は今、一体何を……)
自分の行動に混乱しながらキールは片手で口元を覆い、高鳴る鼓動が落ち着くことを願うばかりだった。