三回も婚約破棄された小リス令嬢は黒豹騎士に睨まれる~実は溺愛されてるようですが怖すぎて気づきません~

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「キール君をよく思わない人間が不穏な動きをしているようです。もしかするとヴィオラ嬢にも何か仕掛けてくるかもしれません。お二人ともくれぐれも気をつけてください」

 魔力測定が終わり自分たちの屋敷へ戻ってきたヴィオラとキールは、王城でクレストから言われた言葉について考えていた。

「どうしてキール様をよく思わない方がいらっしゃるのでしょうか?大魔獣を倒した英雄なのに……」
「英雄だから、なのだろうな。それに魔力放出の発作が起こっていた頃はそれだけで国にとって危険な存在だと騒ぐ人間も多かった。大魔獣を倒したことで英雄にはなったが、逆にいえば大魔獣がいなくなった今ではもう用済みということかもしれない」

 魔力放出の発作が起こる人間はそれだけで国の脅威になりうる。国にとって問題のある大魔獣を倒してくれたのはありがたいが、もうその大魔獣という問題が存在しないのであれば次は魔力放出の発作を起こすキール自体が問題そのものになるのだ。

「クレスト先生はそれを危惧して俺にヴィオラを紹介してくれた。だが、魔力が安定したことで今度は俺を排除する理由が無くなってしまった」
「それはそれで良いことなのでは?」
「そうは思えない連中なのだろうな。あくまでも今は安定しているだけでまたいつ何がどうなるかわからない、確定しないものはやはり排除するべきだと思っているのだろう。それで慌てて動き出したということなんだろうな」

 大魔獣を倒し国に平和をもたらした存在なのに、大魔獣がいなくなったら危険な存在だと思うなんてあまりにも勝手すぎる。
 魔力の量が異常なのも、魔力放出の発作が起こってしまうのもキールが悪いわけではない。それに魔力放出の発作で一番苦しんでいたのはキール自身だ。そんな人を一方向の視点だけで勝手に危険人物だと排除しようとするなんて。

 普段温厚なヴィオラだがさすがに腹がたったのだろう、ムッとした表情で拳をきつく握りしめている。

「納得いきません。魔力放出の発作で一番苦しんでいらっしゃるのはキール様なのに。発作が落ち着いているのにそれでも危険人物だと判断するなんてあまりにも勝手すぎます」
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