三回も婚約破棄された小リス令嬢は黒豹騎士に睨まれる~実は溺愛されてるようですが怖すぎて気づきません~
(えっと、これは……)
キョロキョロと周りを見渡すが木しか見えない。先ほど騎士が割った小瓶のようなものからは紫色の靄が空に向かって昇っていく。それをぼうっと見ていると、背後からミシッ、ミシミシッドサッっと木が折れるような嫌な音がする。ヴィオラはごくりと喉を鳴らして恐る恐る後ろを振り向いた。そこには、大きな大きなトカゲのような魔獣が鋭い牙と爪を光らせている。あの騎士が置いていった小瓶から出ていた靄は、この森にいる魔獣を誘き寄せるためのものだったのだ。
(ひっ……!)
恐怖のあまりヴィオラは足が動かない。魔獣はヴィオラを認識すると尻尾を一振りしてからシャアアア!と牙を向けてドスドスとヴィオラへ突進してくる。魔獣が鋭い爪をヴィオラへ振り翳しヴィオラが思わず目を瞑ったその時。
ヒュンッ
ヴィオラの体が宙に浮いたかと思うと、いつの間にかキールの腕の中にいてヴィオラは魔獣の爪を間一髪で免れた。
「キール様!」
「間に合ってよかった、大丈夫か?」
ヴィオラを安全な場所へ降ろしてキールはヴィオラに尋ねる。ヴィオラは首を大きく縦に振るとキールは安心したように微笑んだ。
「ここにいるんだ。すぐに終わらせる」
そう言ってキールは剣を抜き、魔獣へ向かって走り出す。魔獣はキールを認識すると尻尾を振り回しキールへ攻撃しようとするがキールは軽々とそれを避ける。キールの動きは素早く、魔獣はキールを目掛けて攻撃するが全く当たらない。キールは剣を一振りすると、魔獣は真っ二つに切り裂かれ黒い靄になって消滅していった。
(キール様、本当にお強い!まるで黒豹のような動きであっという間にあんな大きな魔獣を倒してしまった。さすがは過去に大魔獣を倒した英雄だわ)
ヴィオラは目を輝かせながらキールを見つめている。その視線に気づいたキールは少し照れたように頭をかきながらヴィオラの元へ戻ってきた。
「ヴィオラが無事でよかった。何か変なことはされていないか?」
「大丈夫です。ただ馬車に乗せられて気がついたらここに降ろされてしまっていました」
ヴィオラの言葉にキールはホッとする。
「本当によかった……」
キールは静かにそう言ってそっとヴィオラを抱きしめる。優しく、だがしっかりとした腕の力にヴィオラは驚き、思わず硬直してしまう。
(え、え?キール様?)
自分を抱きしめるしっかりとした腕、そして自分の体がすっぽりと覆われてしまうほどの男らしい体つきがはっきりと伝わってくる。キールと密着した状態にヴィオラは沸騰してしまいそうだ。少し間があって、キールがハッとして腕を離す。
「……すまない。思わず抱きしめてしまった」
キールがヴィオラの顔を覗き込むと、ヴィオラは真っ赤になっている。そんなヴィオラを見て、キールもまた顔を赤らめて口元に手を添え目を逸らした。
コホン、と一つ咳払いをしてからヴィオラの胸元に着けられたブローチにそっと触れると、エメラルド色だった石は蒼色に変化した。
「このブローチのおかげだな。先生も今頃ヴィオラを連れてきた騎士を捕獲している頃だろう」
「もう捕獲し終えましたよ」
キールとヴィオラが声のする方へ視線を向けると、そこには先ほどヴィオラを放置していった騎士が光の縄で身動きを封じられたまま宙に浮き、そばにクレストが微笑んで立っていた。
キョロキョロと周りを見渡すが木しか見えない。先ほど騎士が割った小瓶のようなものからは紫色の靄が空に向かって昇っていく。それをぼうっと見ていると、背後からミシッ、ミシミシッドサッっと木が折れるような嫌な音がする。ヴィオラはごくりと喉を鳴らして恐る恐る後ろを振り向いた。そこには、大きな大きなトカゲのような魔獣が鋭い牙と爪を光らせている。あの騎士が置いていった小瓶から出ていた靄は、この森にいる魔獣を誘き寄せるためのものだったのだ。
(ひっ……!)
恐怖のあまりヴィオラは足が動かない。魔獣はヴィオラを認識すると尻尾を一振りしてからシャアアア!と牙を向けてドスドスとヴィオラへ突進してくる。魔獣が鋭い爪をヴィオラへ振り翳しヴィオラが思わず目を瞑ったその時。
ヒュンッ
ヴィオラの体が宙に浮いたかと思うと、いつの間にかキールの腕の中にいてヴィオラは魔獣の爪を間一髪で免れた。
「キール様!」
「間に合ってよかった、大丈夫か?」
ヴィオラを安全な場所へ降ろしてキールはヴィオラに尋ねる。ヴィオラは首を大きく縦に振るとキールは安心したように微笑んだ。
「ここにいるんだ。すぐに終わらせる」
そう言ってキールは剣を抜き、魔獣へ向かって走り出す。魔獣はキールを認識すると尻尾を振り回しキールへ攻撃しようとするがキールは軽々とそれを避ける。キールの動きは素早く、魔獣はキールを目掛けて攻撃するが全く当たらない。キールは剣を一振りすると、魔獣は真っ二つに切り裂かれ黒い靄になって消滅していった。
(キール様、本当にお強い!まるで黒豹のような動きであっという間にあんな大きな魔獣を倒してしまった。さすがは過去に大魔獣を倒した英雄だわ)
ヴィオラは目を輝かせながらキールを見つめている。その視線に気づいたキールは少し照れたように頭をかきながらヴィオラの元へ戻ってきた。
「ヴィオラが無事でよかった。何か変なことはされていないか?」
「大丈夫です。ただ馬車に乗せられて気がついたらここに降ろされてしまっていました」
ヴィオラの言葉にキールはホッとする。
「本当によかった……」
キールは静かにそう言ってそっとヴィオラを抱きしめる。優しく、だがしっかりとした腕の力にヴィオラは驚き、思わず硬直してしまう。
(え、え?キール様?)
自分を抱きしめるしっかりとした腕、そして自分の体がすっぽりと覆われてしまうほどの男らしい体つきがはっきりと伝わってくる。キールと密着した状態にヴィオラは沸騰してしまいそうだ。少し間があって、キールがハッとして腕を離す。
「……すまない。思わず抱きしめてしまった」
キールがヴィオラの顔を覗き込むと、ヴィオラは真っ赤になっている。そんなヴィオラを見て、キールもまた顔を赤らめて口元に手を添え目を逸らした。
コホン、と一つ咳払いをしてからヴィオラの胸元に着けられたブローチにそっと触れると、エメラルド色だった石は蒼色に変化した。
「このブローチのおかげだな。先生も今頃ヴィオラを連れてきた騎士を捕獲している頃だろう」
「もう捕獲し終えましたよ」
キールとヴィオラが声のする方へ視線を向けると、そこには先ほどヴィオラを放置していった騎士が光の縄で身動きを封じられたまま宙に浮き、そばにクレストが微笑んで立っていた。