三回も婚約破棄された小リス令嬢は黒豹騎士に睨まれる~実は溺愛されてるようですが怖すぎて気づきません~
(えっと、これは一体……?)
この国では特別な相手に自分の瞳と相手の瞳の色の石を付けたアクセサリーを送る風習がある。しかも指輪の場合、愛を告げる意味も込められているのだ。いくら色恋に疎いヴィオラとはいえ、それくらいの知識は持っている。
「あの、なぜキール様は私に指輪を……?」
ヴィオラの問いにキールが答えようとした時、店の奥から店長が戻ってきた。
「出来上がりました、キール様ご確認ください」
箱に入った指輪を見せ、キールがそれを確認する。そしてほんの少し微笑むとキールは力強く頷いた。
「ありがとう、これをいただく」
「こちらこそありがとうございます!末永くお幸せに」
店長は嬉しそうにヴィオラへそう言うと、ヴィオラは戸惑いながらキールを見上げる。見上げた先のキールの顔はヴィオラをとてつもなく愛おしいものを見るような瞳で見つめていて、思わずヴィオラは顔を真っ赤にする。そんなヴィオラを見てキールはさらに嬉しそうに微笑み、そんな二人を見ながら宝石店の店長はニコニコと満面の笑みを浮かべていた。
宝石店からの帰りの馬車の中ではいつものようにヴィオラのむかいに座るキールの長い足がヴィオラの足を包み込むような形になっている。最初は驚いたが、今では当たり前の光景だ。
目の前のキールは窓の外を眺めながら無言だ。いつもはヴィオラをじっと睨んでいたりヴィオラの菓子パンをもらってみたり、何かしらヴィオラに絡んでくるのだが今日はそれがない。一体どうしたのだろうかとヴィオラは不安になる。
昔ほど常に何かを食べなければいけないということはなくなったが、それでも緊張したりするとつい食べ物を口に含みたくなってしまう。いそいそとバスケットの中からクリームパンを取り出してもぐもぐと食べ始めた。
(あぁ、やっぱり美味しい。それにこうしていると落ち着く)
嬉しそうに頬を膨らませもぐもぐと口を動かしていると、ふと視線を感じキールを見る。するとキールは宝石店で見せた表情のようにとても愛おしいものを見るような瞳でヴィオラを見つめていた。それに気づいてヴィオラの体温は一気に上がる。
そんなヴィオラを見つめながら、キールはそっとヴィオラに手を伸ばす。キールの手がヴィオラの頬に伸びてきて、ヴィオラは少し縮こまって咄嗟に両目を瞑ってしまった。だがヴィオラはすぐに目を開くとキールと目が合う。そしてキールの手がゆっくりとヴィオラの口元を掠めた。
「クリーム、またついてたぞ」
ふっ、と笑いながらキールは指についたクリームを舐める。その仕草は前に見た時のように色っぽく、ヴィオラはさらに体温が上昇してしまうのを自覚した。
この国では特別な相手に自分の瞳と相手の瞳の色の石を付けたアクセサリーを送る風習がある。しかも指輪の場合、愛を告げる意味も込められているのだ。いくら色恋に疎いヴィオラとはいえ、それくらいの知識は持っている。
「あの、なぜキール様は私に指輪を……?」
ヴィオラの問いにキールが答えようとした時、店の奥から店長が戻ってきた。
「出来上がりました、キール様ご確認ください」
箱に入った指輪を見せ、キールがそれを確認する。そしてほんの少し微笑むとキールは力強く頷いた。
「ありがとう、これをいただく」
「こちらこそありがとうございます!末永くお幸せに」
店長は嬉しそうにヴィオラへそう言うと、ヴィオラは戸惑いながらキールを見上げる。見上げた先のキールの顔はヴィオラをとてつもなく愛おしいものを見るような瞳で見つめていて、思わずヴィオラは顔を真っ赤にする。そんなヴィオラを見てキールはさらに嬉しそうに微笑み、そんな二人を見ながら宝石店の店長はニコニコと満面の笑みを浮かべていた。
宝石店からの帰りの馬車の中ではいつものようにヴィオラのむかいに座るキールの長い足がヴィオラの足を包み込むような形になっている。最初は驚いたが、今では当たり前の光景だ。
目の前のキールは窓の外を眺めながら無言だ。いつもはヴィオラをじっと睨んでいたりヴィオラの菓子パンをもらってみたり、何かしらヴィオラに絡んでくるのだが今日はそれがない。一体どうしたのだろうかとヴィオラは不安になる。
昔ほど常に何かを食べなければいけないということはなくなったが、それでも緊張したりするとつい食べ物を口に含みたくなってしまう。いそいそとバスケットの中からクリームパンを取り出してもぐもぐと食べ始めた。
(あぁ、やっぱり美味しい。それにこうしていると落ち着く)
嬉しそうに頬を膨らませもぐもぐと口を動かしていると、ふと視線を感じキールを見る。するとキールは宝石店で見せた表情のようにとても愛おしいものを見るような瞳でヴィオラを見つめていた。それに気づいてヴィオラの体温は一気に上がる。
そんなヴィオラを見つめながら、キールはそっとヴィオラに手を伸ばす。キールの手がヴィオラの頬に伸びてきて、ヴィオラは少し縮こまって咄嗟に両目を瞑ってしまった。だがヴィオラはすぐに目を開くとキールと目が合う。そしてキールの手がゆっくりとヴィオラの口元を掠めた。
「クリーム、またついてたぞ」
ふっ、と笑いながらキールは指についたクリームを舐める。その仕草は前に見た時のように色っぽく、ヴィオラはさらに体温が上昇してしまうのを自覚した。