彗星航路

「どうしたの碧衣、疲れてる?」

「ううん、別に。でも、午前中授業受けなかったから、体のリズムが狂ってる感じ」

「痴漢倒したせいで殺気立ってるとか?」

「私のことなんだと思ってるの?」

「なに、アオイ、痴漢捕まえたの?」

 話を聞きつけたクラスの子が、大ニュースみたいな顔をしながら私の隣で立ち止まる。それを聞いた別の子達も「うそうそ、マジ?」「少女漫画のヒーローじゃん」と声を上げて反応した。

「いーなあ、私もアオイに守られたい」

「でも痴漢だよ?」

「アオイが助けてくれるんだからプラマイプラスだよ」

 キリ、と胃が少し痛み、苦笑いを浮かべることしかできなかった。

 その胃の痛みは、部活が終わる頃に増していた。防具をとった後、腹部を軽く撫でていると「どうしたの、お腹の調子悪いの?」と声をかけられた。

「そういうわけじゃないんだけど、違和感がある」

「生理?」

「終わったばっかり」

「あ、そう? じゃ体調かな、アオイにもそういうことあるんだね」

 彼女は中学から部活が一緒で、私が中学時代に風邪一つ引いたことないことを知っていた。
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