彗星航路
高身長に中性的な顔立ち、制服を着れば体の凹凸はあまり目立たず、ジャージでも着ようものならますます男子と間違えられる。そんな見た目に加えて、中学では生徒会副会長と剣道部の主将を務め、成績は常に学年トップ。友達には「アオイより格好良い男子なんていない」と言われてきた。
そんな私には、中学生のとき、好きな人がいた。彼は男子剣道部の副将で、私が副会長を務めていた生徒会で生徒会長を務めていた。
その人の好みがロングヘアのきれいな子だと知って、一生懸命髪を伸ばした。夏の練習中は防具で蒸れすぎて禿げそうで、何度も切ろうとしたけれど、それでも頑張って伸ばした。卒業式に告白しようと決めて、お母さんの高そうなヘアマスクをこっそり借りてまで念入りに手入れして迎えた卒業式の前日。
『お前、星谷と付き合ってんの?』
『は? 自分よりカッコいい女子なんて女じゃなくね? つか俺、細尾のほうが好みなんだけどー』
生徒会室内で交わされたその会話に、呆気なく失恋した。
格好いい自分は嫌いじゃない。体を動かすのは好きだし、勉強もそう難なくできるから苦ではないし、それを嫌味なく褒めてくれる友達のことも好きだ。
“アオイくん、ちょーイケメン”
でも、たまには可愛いと言われたかった。欲をいうなら、他の誰に言われなくてもいいから、好きな人にくらい、可愛いと。
「ねー、新入生代表挨拶したイケメンってここー?」
それなのに、ほら、そうやってみんな私のことを“イケメン”呼ばわりする……。