そして俺は、契約妻に恋をする
　真倫はまだ生後七カ月。やっとお座りができるような赤ちゃんだ。はらはらと舞う桜の花びらにキャッキャと笑いながら手を伸ばす仕草がかわいい。

「さあ、お家に帰ろうか」

　妊娠は予想外だった。

　気づいたのは、離婚届を真司さんに送った少し後。うれしさを味わう余裕もなかったな。

　なにしろ私は父から勘当されてしまったから。

　離婚届を送った日に実家に報告をしたが、案の定父の逆鱗に触れ『今後一切我が家の敷居は跨ぐな！』と腕を引っ張られて放り出された。

　殴られなかっただけましだと思っているし、予想通りだったので別に傷ついてもいない。

　ただ、離婚の理由くらい聞いてくるかと一応それなりの理由を考えていたのに、何一つ聞いてはこない父に、ああ私を人形のようにしか見ていないんだなと寂しく思っただけだ。

　私は天涯孤独の身の上になった。

　これで本当の意味での自由になれたと思えば悲しくはない。私は大丈夫。そう強がって。

　でもその後、妊娠がわかった。

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