そして俺は、契約妻に恋をする
 子どもを産んで一人で育てるにはどうしたらいいのか、途方に暮れる私を支えてくれたのは友人たちだった。

 不意にポケットの中でスマートフォンが揺れた。

 見ればちょうど今考えていたリエちゃんからのメッセージである。

【金曜日忙しい? 有休とろうかと思って。一緒に花見散歩しようよ】

【いいね】

 オッケーのスタンプを押す。

【やったー!】

 喜び溢れるスタンプが並びに、思わずクスッと笑う。

 仕事を辞めてからもリエちゃんとはなんだかんだと連絡を取り合っていた。離婚を最初に報告したのも、家を勘当されたと報告したのも、真っ先に妊娠を告げたのも彼女だ。

『香乃子、私がいるよ。大丈夫、ひとりじゃないよ』

 泣きながらそう言ってくれた優しくて最強の友は、彼女のマンションの近くにアパートを見つけてくれた。

 そして今の仕事を紹介してくれたのは学生時代からの親友、山咲百恵ことモモだ。友人の結婚式の二次会で会い、相談して助けてもらった。

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