そして外交官は、契約妻に恋をする
 でも妊娠しているとわかったからにはそうはいかない。ある程度の貯金はあるが、子どもとふたり、お金のかからない生活を目指すと決め、リエちゃんが見つけてくれたここに決めたのである。

 次に悩んだのは仕事だった。アルバイトをするにしても悪阻が始まれば職場に迷惑をかけるかもしれず、どうしようと思っていたところに、モモの伯母、喜代子さんが声をかけてくれた。

 喜代子さんはご主人と小料理屋『小料理キ喜』を営んでいたが、料理人だったご主人が事故で大怪我を負い途方に暮れていたところだった。ちょうど私は調理師の免許を持っているし、薬膳の資格もいくつか持っているので、喜代子さんは喜んで受け入れてくれたのだった。

「さあ、お店に行く準備をしようね」

 真倫を一旦着替えさせる。

 調理の仕事はお店のオープン前。お客様がいないので、真倫を背負ったりあやしたりしながら働ける。

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