そして外交官は、契約妻に恋をする
 接客せずに済み、自分のペースで働けるという私にはうってつけの仕事だ。期間は一年か二年。ご主人の状態によるけれど、それでもありがたい。

 おむつも変えて荷物を持ってさあ出発。

 途中、商店街のおばちゃんたちに声をかけられて、真倫は「ばーぶー」とご機嫌だ。

 そしてキ喜に到着する。

「さあ、真倫おんぶしようね」

 真倫を背負い料理をスタートすると、スマートフォンがメッセージの着信を告げる音を立てた。

 画面に視線を落とすと母からである。

 いい話であるはずもなく、料理がひと段落してから見ることにした。

 まずは筑前煮の下ごしらえを済ませなければ。南蛮漬けにする小鯵を揚げて、鰯の梅煮に厚焼き玉子。ポテトサラダ用にじゃがいもも茹でたりと、時間に余裕はない。

 父に追い出されたとき、母は外まで出てきた。

 でも、母も父と同じだ。理由を聞こうともせず離婚の心配しかしない。

『神宮寺さんに謝って。離婚はなんとか避けられないの?』

< 112 / 236 >

この作品をシェア

pagetop