そして外交官は、契約妻に恋をする
李花は英語が苦手だ。だからひとりで来たわけではなかったが、友人を待たせて大使館に俺に会いに来た。
『真司さん、ようやく自由になりましたね』
そう言って、チョコレートと長細い箱のプレゼントを渡してきたのだ。
自由とはどういう意味かと聞くと、彼女は『ただなんとなく』と言葉を濁した。
ちらりと香乃子が脳裏をよぎったが、彼女が離婚届の件を知るはずもなく、そのときは深く考えなかった。
だがその後、ほぼ同じセリフを母が口にしたのは偶然とは思えない。
空港からタクシーでまっすぐ実家に帰ると、母はいた。
「あら、お帰りなさい」
「ただいま」
挨拶も早々に桜井の義母がなんと言ってきたのかを聞いた。
「この度は申し訳ありませんって仰るから最初はなんの話かわからなかったわ。あなた何にも報告しないんだもの」
「それで?」
『真司さん、ようやく自由になりましたね』
そう言って、チョコレートと長細い箱のプレゼントを渡してきたのだ。
自由とはどういう意味かと聞くと、彼女は『ただなんとなく』と言葉を濁した。
ちらりと香乃子が脳裏をよぎったが、彼女が離婚届の件を知るはずもなく、そのときは深く考えなかった。
だがその後、ほぼ同じセリフを母が口にしたのは偶然とは思えない。
空港からタクシーでまっすぐ実家に帰ると、母はいた。
「あら、お帰りなさい」
「ただいま」
挨拶も早々に桜井の義母がなんと言ってきたのかを聞いた。
「この度は申し訳ありませんって仰るから最初はなんの話かわからなかったわ。あなた何にも報告しないんだもの」
「それで?」