そして外交官は、契約妻に恋をする
 となると明日報告するしかないか。結婚退職の報告をバレンタインにするなんて、ラブラブカップルとはほど遠いだけに絶対避けたい。

 チョコレートか……。

 ふとお見合い相手の神宮寺さんが脳裏に浮かんだ。
 でも、どうしても甘いチョコレートと結びつかず苦笑する。

 お見合いの話が舞い込んだのは、一月の末。

 父が顔を出した新年会で、真司さんのお父様と会いそんな話になったらしい。

 私は初めてのお見合いだったけれど、彼はどうなんだろう。

 つらつら考えながら家に帰ると、駐車場に見慣れぬ車があった。

 スポーティーな感じのする黒い外車である。

 静かに玄関を入ると、待ち構えたように母が顔を出した。

「香乃子、真司さんがお見えよ」

「えっ」

 慌ててリビングに行くと、相好を崩した父が真司さんと話をしていた。

 簡単な挨拶の後、父が「香乃子、真司くんにお前の部屋を見せてあげなさい」と言い出した。

 ギョッとする私に、なおも父は畳みかけてくる。

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