そして外交官は、契約妻に恋をする
 良武くんは里芋を箸で摘まんで味見をする。

「どうですか?」

「相変わらず、うまいっす!」

 良武くんの身長は一七〇センチくらいで体は細いが、ジムに通って体を鍛えているだけあって腕にはしっかりと筋肉がある。私がここに来たときはすでに病気を完治していたので、二年近く入院生活を送っていたと聞き驚いた。

 にこにこと明るい彼に病の影はないが、病気を経験して食事の重要性に考えたらしい。それまではこの店にまったく興味がなかったそうだ。

 それが今では喜代子さん以上に熱心に料理の勉強をしている。私が薬膳の勉強をしていたと知り、勉強熱心な彼は空き時間があると勉強がてらこうして手伝いに来てくれるのだ。

「まりーん。今日もかわいいな」

 頬をつつかれて真倫は手足をばたばたさせながらキャッキャと喜ぶ。

 そうこうするうち、ひと通りの準備が終わり、良武くんに後をお願いして店を出る。

 途中、公園に立ち寄り母に電話をかけた。

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