そして外交官は、契約妻に恋をする
 呼び出し音が鳴ってすぐに電話にでた母は、待ちくたびれたように『もう、心配したじやない』と溜め息をつく。

「ごめんね、ちょっと手が放せなくて」

『とにかく会いましょう。どこでもいいわ、すぐに向かうから』

 勢いに負けて近くにあるファミリーレストランの名前を告げた。ファミレスならば真倫が泣き出してもなんとかなる。

 いつまでも逃げ回っていても仕方がない。

 母に真倫を紹介しよう。そして、こうなった事情を説明しよう。

 私と彼はもともと一年間という約束の契約結婚だったことはすでに伝えたが、真倫を守るためにはそれだけじゃ足りない。。

 真司さんには一ノ関李花さんという再婚相手がいるのだと伝えるしかないかもしれない。なんとか母を味方につけて、真倫の親権を死守しなければ。

 ただ、真司さんを悪者にするわけにはいかないから、言葉に気をつけないと。

 向かったファミレスは幸い空いていた。

 気持ちが落ち着くよう温かいココアを頼む。

「赤ちゃんに離乳食のサービスです」

< 126 / 236 >

この作品をシェア

pagetop