そして外交官は、契約妻に恋をする
「ありがとうございます」

 このファミレスはプリンのような離乳食をサービスしてくれるのだ。

「赤ちゃんかわいいですねー」

 手を振る店員さんを見て真倫はうれしそうに笑う。

 名残惜しそうに振り返りつつ、彼女は持ち場に戻っていく。きっと子どもが好きなんだろう。

「よかったね真倫。お姉さんがかわいいって言ってたよ」

 親の欲目だと自覚はあるが、真倫は本当にかわいい。父親の整った顔だちを受け継いでいるからとっても美人さんになると思う。

 でも笑うと私に似ているんだよね。

「食べてみよっか」

 さっそくカボチャの離乳食を真倫に食べさせていると「香乃子?」と、聞き慣れた声がした。

 母が唖然とした表情で、前の席に座る。

「――その子、まさかあなた」

「黙っててごめんなさい。私の子」

「真司さんの子なのよね?」

 母は不安そうに私を見るが、そう確認したくなるのもわかる。身を隠して赤ちゃんを出産するなんて、父親を疑われても仕方がない。

「そうよ」

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