そして外交官は、契約妻に恋をする
「こっちが聞きたいわよ」

 どういうことなの?

「香乃子、どうして真司さんとちゃんと話をしようとしないの?」

「それは……真倫を守りたくて」

 正直に言った。真倫を争いに巻き込みたくない。

 切なる願いを胸に振り向くと、真倫はキョトンと私を見る。ずれたよだれかけを直しにっこりと微笑みかけると、真倫はうれしそうに笑う。

 この子には絶対悲しい思いをさせたくない。

「真司さんは香乃子と離婚する気がないって言ってるのに、どうしてそんなに離婚したいの?」

 それは、李花さんが……。

「いい人に見えるけど、真司さんに問題があるの?」

「ないわよ、彼は優しくていい人よ?」

 ますます母は顔をしかめる。

「じゃあいったいなにがあったのよ」

 腑に落ちない様子の母に聞いてみた。

「お母さん、この一年神宮寺家とはなんの話もしていないの?」

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