そして外交官は、契約妻に恋をする
 ウォーキングクローゼットの中はゴチャゴチャだが、見えるところは問題ない。女の子が綺麗好きでなくてどうするの、と母に厳しくチェックされているおかげで、まあまあ整っている。

 ベッドよし、ドレッサーよし、机の上、チェスト。素早く目を走らせる。

「仕事の勉強をしているんですね」

 真司さんは、机の上にある本を目に留めたようだ。

「SKシップパートナーズでは、どんなお仕事を?」

「ポストフィクスチャーをしています。ほとんど書類作成ですね。シップブローカーとチームを組んでの仕事になります」

 SKシップパートナーズはシップブローカーという、船を仲介する仕事が中心だ。私自身はシップブローカーではなく、ポストフィクスチャーという成約後の契約書など付帯業務をしている。

「なるほど。英語もそれで?」

「はい。取引先は海外も多いですし」

 机の上の本棚には、船に関する本のほか、英語、中国語と辞書が並んでいる。

「見せてもらっていいかな?」

「はい」

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