そして外交官は、契約妻に恋をする
 そんなはずはない。李花さんの話は作り話にしては辻褄が合っていたし、嘘にしてはできすぎている。彼女は彼を信じて待っている。私だけの問題じゃない。

 結局話は平行線のまま、真司さんは帰った。

 また会いに来ると言っていたが、もしかしてこれから毎日来るつもりなのか。

 だとしたら私はどう対応すればいいのか。悶々と悩みながら一日を送った。

 来るとしたら仕事が終わった夜。

 どうか来ないで欲しいと思う気持ちの裏で、夕ご飯はなににしようかと考える自分に呆れ、苦い笑みがこぼれた。

 でも結局、彼は現れなかった。

 次の日には気持ちが少し落ち着いた。

 彼もきっと冷静になったんだろう。真倫に会って先走ってしまったに違いないと思った。彼は誠実な人だから、私と話をしてから、私が元気であるのを確認してから離婚に踏み切りたかったに違いない。

 私が逃げていたばっかりに、却って時間を取らせてしまって申し訳なかった。

 そう思いながらも、バカな私はどこか期待していたのかもしれない。

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