そして外交官は、契約妻に恋をする
夕方六時頃にドアを叩く音がして、吸い寄せられるようにしてドアを開けてしまった。
見知らぬ若い男性が立っていて『近くで美容室をオープンしたのでよろしくお願いします』とチラシを置いていった。不審者ではなかったからいいようなものの、チェーンずらせずにドアを開けてしまうなんて。
後になって無性に怖くなった。
普通の人に見えた男性が、もし悪人だったら。通りに面しているアパートとはいえ、この部屋は奥まっている。防犯ベルを買っておくべきだったか。外から聞こえるわずかな物音に怯え真倫を抱くと、不安が伝わったのか真倫も泣き出した。
『泣かないで大丈夫だよ』と布団を被って抱きしめていると、悲しくて、寂しくて涙が頬を伝わった。
自由を手に入れたと夢中で毎日を過ごしてきたけれど、時々振り返ってしまう。
真司さんと過ごした楽しかった日々。
しっかりしなきゃ。
緊張したせいで浮き足立っていた気持ちも落ち着き、冷静さを取り戻した。
見知らぬ若い男性が立っていて『近くで美容室をオープンしたのでよろしくお願いします』とチラシを置いていった。不審者ではなかったからいいようなものの、チェーンずらせずにドアを開けてしまうなんて。
後になって無性に怖くなった。
普通の人に見えた男性が、もし悪人だったら。通りに面しているアパートとはいえ、この部屋は奥まっている。防犯ベルを買っておくべきだったか。外から聞こえるわずかな物音に怯え真倫を抱くと、不安が伝わったのか真倫も泣き出した。
『泣かないで大丈夫だよ』と布団を被って抱きしめていると、悲しくて、寂しくて涙が頬を伝わった。
自由を手に入れたと夢中で毎日を過ごしてきたけれど、時々振り返ってしまう。
真司さんと過ごした楽しかった日々。
しっかりしなきゃ。
緊張したせいで浮き足立っていた気持ちも落ち着き、冷静さを取り戻した。