そして外交官は、契約妻に恋をする
 なんともありがたい話だ。私にはいつか自分のお店を持ちたいという夢がある。そう簡単なことではないから、叶うのはずっと先。

 でも、ここで経験ができれば。

 わくわくと胸が踊る。

 喜代子さんのご主人が完全復帰するまでは、まだ最低でも二週間はかかりそうだという。それまでに考えてくれればいいと言ってくれた。

 帰る道々考えた。

 ランチタイムの三時間か。

 真倫をどこかに預ける? それとも背負って? バイトを雇う余裕はあるのかな。

「真倫、ママどうしよう」

 ベビーカーの真倫に話しかけると、真倫は手にしたおもちゃをパタパタと振って笑う。



 明くる日は、リエちゃんと花見の約束をした金曜日。

 朝から天気もよく、花見にでかけた。

「こんにちは真倫ちゃーん」

 リエちゃんはいつものように顔の両脇に手を広げておどけて見せる。

 真倫もご機嫌でキャッキャと笑う。

「お母さんがお弁当作ってくれたんだ。公園で食べよう」

「うわー、ありがとう」

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