そして外交官は、契約妻に恋をする
 早速広げたお弁当は、二段重ねの重箱で一段目にはいなり寿司。二段目には唐揚げと厚焼き卵。ポテトフライにブロッコリーやニンジンのサラダ。リエちゃんのお母さんの優しさが詰まったお弁当にほっこりする。

「香乃子の料理と違ってありきたりの定番だけど、まあたまにはいいでしょ」

「すごくうれしいよ。リエちゃんのお母さんの手作りすごく美味しいもの。ありがとう、本当にうれしい」

 リエちゃんのお母さんには出産のときに、とてもお世話になった。

 なのに今の私にお返しできるものはなくて。

「なんだか申し訳ないな……」

「ん? もう、気にしない気にしない。うちのお母さん香乃子の筑前煮めっちゃ好きなんだよ。この前たくさんくれたお礼だって」

 あっけらかんと笑うリエちゃんは、紙袋から別の保存容器を取り出した。

「はーい。真倫ちゃんには、ジャガイモとかリンゴとかで作った離乳食でちゅよー」

 お座りしている真倫は「あーう」と、リエちゃんに答える。

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