そして外交官は、契約妻に恋をする
 カレーでひとつメニューができる。ほかに二種類くらいあれば十分か。副菜は作り置きで、メインの温かいものだけ注文後に入れればいいか。ワンプレートなら盛り付けるだけ。頭の中にイメージが湧きワクワクと胸が躍る。

「問題は真司さんだね」

「あ、うん……」

「よかったねと言いたいところだけど、香乃子はやっぱり身を引きたいんだよね?」

 キュッと口を結んで頷いた。気持ちは今でも変わらない。

「私たちはもともと一年の約束だったし。李花さんはそれを信じて待っていたわけだから、蔑ろにはできない。神宮寺の家もそのつもりでいるんだもの」

「じゃあさ、その辺の事情を取っ払って考えてみて、真司さんのことだけを考えたら、香乃子はどうなの?」

「それは――」と切り出したものの後が続かなかった。

 自分の気持ちはわかっている。

 離れて暮らして消えかけたと思っていた想いが、彼の登場でまた形を帯びてきた。

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