そして外交官は、契約妻に恋をする
 李花が裏でなにかしているのか。とにかく母にもう一度よく話を聞こう。

「なにしろ母親が日本有数の華道の家元ですからね。外務省とも結構繋がりがあるんじゃないですか?」

「ああ。レセプションでよく協力してもらっている」

 それだけに面倒だと思いながらも李花に気を遣ってきたのだ。

 香乃子が心配だ。

「真司さんが香乃子さんをあきらめていないと知れば、ちょっと心配ですね」

「まいったな……」

「なにかあれば言ってください。協力は惜しみませんから」

「ありがとう」

 仁は帰り、さて次は何から手をつけようかと考えた。

 母に話を聞く必要があるが、まずは香乃子だ。

 李花の件も疑わしい今、一刻も早く彼女をここに連れてきたい。問題はどう説得するか。

 アパートで交わした会話をつらつらと思い返した。

『君は一年という約束じゃなければ俺と結婚しなかったのか?』

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