そして俺は、契約妻に恋をする
 真倫が可愛くて仕方がないといった様子に、喜んでいいのか困っていいのか。私はどう受け止めていいかわからない。

「パパがおもちゃを買ってきたぞ」

 今日も真倫は真司さんをジッと見つめてからキャッキャと笑う。器用な真司さんは、真倫の頭を支えるようにして、この前よりも上手に抱いている。

「赤ちゃん向けのお菓子も入れてもらったんだ」

「ありがとうございます」

 とりあえず、今夜も夕食を用意するしかないか溜め息混じりに思いつつ、冷蔵庫に西京味噌で漬け込んだサワラがあるのを思い出した。

 彼が来たときのためにと、用意しておいたままだ。

 夕べ多めに作った肉じゃがもある。

 私一人じゃ食べきれないしと、自分に言い聞かせつつ声をかけてみた。

「夕ご飯食べていきますか?」

「いいのか?」

 そんなふうにハッとしたような笑みを向けられると、まあいいかと思えてしまう。真司さんの笑顔は危険だ。

「残り物ですけど」

「十分だよ。なんだってうれしいさ」

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