そして外交官は、契約妻に恋をする
「ああ、ソメイヨシノを見ると日本が懐かしくて仕方がなかった」

　去年のこの時期は私はすでに東京にいた。桜を見上げながら真司さんもロンドンで見ているかな、と思っていた。

　真司さんは懐かしそうに桜を見上げている。

　あなたは？　なにを思いながらロンドンの桜を見ていたの？

　心でそっと聞きながら彼の横顔を見ていると、不意に彼が振り返った。

「今年は君と花見ができてよかった」

　にっこりと微笑まれて動揺し、慌てて視線を真倫に移す。胸のドキドキが止まらない。

　なにもわからない真倫は、真司さんが買ってくれた小さなぬいぐるみをブンブン振り回して遊んでいる。

　聞いてみようか？

　李花さんとの関係を。

　私は李花さんの話しか聞いていない。一度くらい彼の話も聞いてみようか……。

「真司さん」

「ん？」

「私たちは――もともと一年間という約束で結婚したんですよね？」

　真倫を抱き上げ、思い切って聞いてみた。

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