そして外交官は、契約妻に恋をする
「香乃子。誤解のないように何度でも言うが、俺は君と結婚したいがために一年と言ったんだ」

 それは何度も聞いたが、前提として李花さんと再婚する未来があるからなのよね?

「えっと……」

 どう切り出したらいいか考えていると、真司さんはとても真剣な目をして体を私のほうに向き直る。

「一年とでも言わないと、君は結婚してくれないと思ったからだよ」

 えっ? じゃあ私と結婚したいがためにつけた条件だと言うの?

「私と、期限は関係なく、結婚したかった?」

 真司さんは「そうだ」と頷く。

「見合いの席で、君となら暮らしていけると思ったんだ。母の質問への返し方も絶妙によかったし――」

 驚いて聞いていると、不意に彼は左右に首を振って笑った。

「白状しよう、そうさ俺はあの日、君に恋をしたんだ。理由なんてつけようがない」

 そんな、嘘でしょう?

「な、何を言い出すんですか」

「だってそうとしか言えない。ハッとしたんだよ、ここが」

 困ったように微笑む彼は自分の胸に手をあてる。

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