そして俺は、契約妻に恋をする
「ばぶばぶー」

 突然私の膝の上の真倫が、手足をバタバタさせた。

「そうか、真倫も応援してくれるんだな」

 あははと笑いながら真司さんが手を伸ばして、真倫を高く抱き上げる。真倫はキャッキャと笑い出した。

 恋? 真司さんが私に……恋?

 とても信じられない。そう思うのに心臓は高鳴るばかりで息まで苦しくなりそうだ。

「香乃子、あとは何? なんでも聞いて」

「あ、いえ大丈夫です」

 いろいろあったような気がするが、彼のおかしな発言のせいで全部吹き飛んでしまった。

 そして、動揺は収まらないまま公園を出てまた歩き、アパートに着いた。

 えっ? どうしたんだろう。

 アパートの隣の部屋の住人が、ご近所さんと不安そうに外で立ち話をしている。

「ちょっと話を聞いてきます」

「わかった」

 真倫を抱いた真司さんを待たせて、隣の部屋に住んでいる高齢の女性に声を掛けた。

「どうかしましたか」

「あら、香乃子ちゃん大変なのよ」

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