そして俺は、契約妻に恋をする
 聞けば泥棒に入られた二階の住人が、実は傷害事件で訴えられていた人物だとわかり、再び警察が来たという。

「えっと……。うちの上の階の人とその人は友達なんじゃなかったでしたっけ?」

 高齢の女性の部屋の二階の住人が空き巣に入られた。そして我が家の上の階の住人とその人は、とても仲がよさそうだった。どちらも二十代の男性だ。

「そうなのよ。上の階の人が警察に連れて行かれると、姿を消しちゃったのよ」

 ということは、私の部屋の上の住人も何か事件に関係あるの?

 唖然としていると、いつの間にかすぐ後ろに真司さんがいた。

「あら、その方は?」

「彼女の夫です。妻と娘がお世話になっています」

 止める間もなかった。

「あらーそうなの。じゃあ心配ないわね。私もしばらく娘の家に行くつもりなのよ。香乃子ちゃんのことが気がかりだったからよかったわ」

 隣人女性は嬉々として真司にイケメンだとか話しかけているが、私はそれどころではない。

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