そして俺は、契約妻に恋をする
 別れる気はない。一年後もその先もずっと一緒にいようと伝えてから彼女を抱いていれば。

 今そんなことを言っても仕方がないが。

 とにかく彼女の中でなにかが引っ掛かっている。それがなんなのか、少しずつ見つけよう。

 昼食は宅配に頼った。

 香乃子はなにか作ると言っていたが、今はゆっくりしようと俺が宅配を勧めた。

 気持ちは落ち着いただろうが、顔色はまだよくない。ベビーベッドの真倫を見つめる彼女の横顔には影がある。

 真倫はお腹いっぱいミルクを飲んですっかり夢の中だ。

 時刻は午後の三時半。朝から出かけていろいろあったのだ。疲れていて当然である。

「君も少し休んだらどうだ? 疲れただろう? 真倫なら大丈夫だ。ちょっと調べ物ものもあるし俺が真倫を見ているから」

 少し迷ったようだったが、それでも彼女は頷いた。

「じゃあ、すみません。ちょっとだけ」

「ああ、休んで」

 香乃子が自分の部屋に行くと、俺は弁護士に連絡をしてアパートの鍵や解約の件の交渉を管理会社に頼んだ。

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