そして外交官は、契約妻に恋をする
 次は母か。

 真倫の存在を母はまだ知らない。

 実はもう七カ月になる赤ん坊がいるとなれば大騒ぎになるのは目に見えている。間違っても香乃子が責められることがないようにしなければ。

 あれこれと考えて、まずは香乃子の母に電話をかけた。

『待っていたのよ真司さん。その後どうなったの?』

「すみません。実は――」

 アパートで起きた一連の経緯をざっと報告すると、義母は絶句していた。

『ああもう本当に……。真司さん、あの子をどうかよろしく頼みます』

 迷ったが思い切って聞いてみた。

「あの、お義父さんは」

『大丈夫よ。まだなにも知らないわ。元気で過ごしているとだけ報告してあるから』

 ホッと胸を撫で下ろした。

 あとひと月後に衆議院選挙がある。

 今回祖父に代わり、祖父の秘書を務めていた従兄弟が立候補をする。

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