そして外交官は、契約妻に恋をする
『焦らないでゆっくり話し合えばいいんじゃない? ランチタイムの営業は気晴らしだと思ってやってみたら? いつ辞めることになっても、うちのほうは問題ないし』

 真司さんもやってみたらと賛成してくれた。

 家事はハウスキーパーを頼めばいいと言ってくれたが、朝は彼が真倫を見てくれるのでアパートで二人暮らしをしていたときよりは全然楽になったので、なにも問題ない。

 仕込みも楽だ。メインメニューは三種類と決めたし、そのうちのひとつは薬膳キーマカレー。消化を助けるターメリックやクミン。抗酸化作用があるカルダモンなどスパイスを使い、昨日残った食材で作るカレーには、その食材の効能を看板に書く。メインはサーモンのクリームコロッケと、鶏の唐揚げ。副菜をいくつかと魚のアラの味噌汁。一時間半もあれば十分準備できるから十時にいけばいい。

 家事を終えて、ベビーカーを押しながらキ喜に向かう。

 真倫は相変わらず真司さんにもらった小さなぬいぐるみを離さない。

「ねえ真倫、パパが好き?」

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