そして外交官は、契約妻に恋をする
 パパは真倫が可愛くて仕方がないみたいだよ。

 彼は何度もありがとうって言っていた。生まれてきてくれてありがとうと。

 離婚した理由を無理に聞こうとしない。キ喜の仕事だって少しも反対しなかった。

 その優しさが判断を鈍らせる。

 離婚するなら、転居先を考えなければならないが、正直足は重たかった。

 幸いランチタイムのオープンは順調だ。

 私が厨房に立ち、喜代子さんが配膳と会計をする。メニューもシンプルなので手間取らずに済んだし、会計が楽なように料金はすべて千円に決めたのもあってサクサクと進んだ。

 毎日ランチに千円出すのはキツいかもしれないが、野菜の和え物など小鉢がいくつかつくので決して高くはない料金設定なので、サラリーマンの男性は皆満足そうに帰っていく。

 三日目にして、早くも数人ながら常連客ができた。

 おかげで今日も盛況である。

 喜代子さんがのれんを仕舞おうとしたとき、客が来たらしい。

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