そして外交官は、契約妻に恋をする
 私は、と考えて溜め息をつく。

 これから母と会わなければならない。

『香乃子。早く真倫に会わせてよ』

 母から何度となくメッセージが来る。いろいろ報告もしなければならないので、再びファミレスで待ち合わせをしたのだ。

 真倫は店の賑わいなどものともせず、キ喜の片隅でぐっすりと眠っていたが、今は起きてベビーカーからぶら下がっているおもちゃに手を伸ばし遊んでいる。

 母は父や兄には真倫の存在を話していないと言っているが、いつまでもこの状態を続けるわけにはいかない。

 ファミレスに行くと既に母はいて明るく手を振っていた。

「まりーん。ばあばが色々買ってきたわよー」

 母は大きな紙袋を横に置き、ベビー服やおもちゃを真倫に見せる。

「お母さん、そんなに持てないって」

 とはいえ孫はかわいいのだろう。無碍にもできず溜め息をついた。

「大丈夫よ。車で来てるから送っていくわ。車にもまだプレゼントがあるし」

「送ってくれなくてもいいってば」

< 197 / 236 >

この作品をシェア

pagetop