そして外交官は、契約妻に恋をする
 真司さんは、彼女を拒絶したのね?

「後になって聞いたんだけど、真司さんはそのとき旅行先で事故にあった邦人の対応にあたっていたのよ。それを言っても納得しない彼女にほとほと呆れていたわ」

「そうなんですか、そんなことが……」

「香乃子はその女性に心当たりある?」

 風貌とわがままぶりで浮かぶのは彼女しかいない。李花さんだ。

「彼女のお母様が、華道の家元をしているんです。外務省と繋がりのある方で」

「なるほどね。だから強引にもできるってわけだ」

 ちらりと真司さんを見ると彼は真倫を膝の上に抱いて、あやしながらナオミさんの夫と話をしている。

 今の話だけで十分だと思った。

 李花さんと真司さん。どちらを信じるかと言えば、私は真司さんだ。彼を信じる。



 真司さんが休日の日、真倫を彼に預けて私は李花さんと約束の場所に向かった。

 調べると彼女は積極的にSNSを発信していて、ダイレクトメッセージに伝言するとすぐに返信があった。

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