そして俺は、契約妻に恋をする
 ちなみに私はいろいろ見るためだけにアカウントを取ってあるだけでなにも発信はしていない。彼女が私だとわかるように、ロンドンのクリスマスに撮った写真を一枚だけアップしておいたのだ。

 返事はすぐにきた。待ち合わせ場所は、高級ホテルのラウンジで、彼女が指定してきた。

「おひさしぶり」と、ツンと澄まして腰を下ろす彼女は、約束の時間に十五分遅れてきた。

「おひさしぶりです」

 ひとまず飲み物を頼む。彼女はコーヒーを、私は紅茶のおかわりを。

「それで? もう〝神宮寺とは関係ない〟あなたが、何の用かしら」

 やけに確信めいた言い方が気になる。

「どういう意味ですか?」

「だってあなたもう離婚してるじゃない」

 ハハッと口先で笑った彼女は、バッグから封筒を取り出す。そろは区役所の封筒で、中から出した紙は、真司さんの戸籍謄本だ。

「ほら、もうあなたは除籍されていて真司さんの妻じゃないわ」

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