そして外交官は、契約妻に恋をする
「夜はうちの旦那や息子がいるからいいんだけど、ちょっと心配なんでね、今日も開店早々怪しげな男が店の前にいたから貼り紙をしたの」

「そうでしたか」

 出された定食は、サバの味噌煮とインゲンの胡麻和えに肉豆腐。生野菜もついていて、もちろんどれも美味しい。

「よかったね香乃子ちゃん。ひとりでも食べてもらえて」

「彼女の料理はどれも美味しいですから」

 喜代子さんが「あら、ごちそうさま」と笑い、香乃子は恥ずかしそうにうつむく。

「この料理は無駄になるんですか?」

 心配になって聞いてみた。

「いいえ、無駄にはしないわよ。夜の部に回すから。近くの子ども食堂にも持っていこうと思ってるし」

「子ども食堂? なるほど」

「喜んでくれるのよ。香乃子ちゃんの料理は美味しいから」

「それならよかったです」

 情報サイトには事情を話して対策してもらうとして、今後しばらくは昼の営業は休もうかと話をしていたところだという。

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