そして外交官は、契約妻に恋をする
『昨日、華道の集まりで会ったから聞いたのよ。〝李花さん、真司は香乃子さんと離婚するつもりはないそうよ〟って。そしたら彼女〝真司さんがかわいそう〟って。〝香乃子って人は男をたぶらかす悪女だって〟さすがに私も言ったわ。李花さん、香乃子さんはうちの大事な嫁なのよ? 聞き捨てならないわって。そしたらいきなり泣き出して。ちょっとおかしいわあの子』
大騒ぎになり、李花の母親が割って入りいったんは落ち着いた。その後、李花の母親と母で口論になったらしく、母はそれ以来華道を休んでいる――。
一筋縄ではいかないな。
考え込みつつ、外務省に戻った。
俺の所属は欧州局で、直近の業務はイギリスの某大臣の訪日に関する関係各所との調整だった。今朝方無事に大臣は帰路に就きホッとしたところだ。
書類をまとめなければいけないが、今日はなんとしても残業できない。とにかく早く帰らなければという一念でなんとか業務をこなし、外務省を出る。
大騒ぎになり、李花の母親が割って入りいったんは落ち着いた。その後、李花の母親と母で口論になったらしく、母はそれ以来華道を休んでいる――。
一筋縄ではいかないな。
考え込みつつ、外務省に戻った。
俺の所属は欧州局で、直近の業務はイギリスの某大臣の訪日に関する関係各所との調整だった。今朝方無事に大臣は帰路に就きホッとしたところだ。
書類をまとめなければいけないが、今日はなんとしても残業できない。とにかく早く帰らなければという一念でなんとか業務をこなし、外務省を出る。