そして外交官は、契約妻に恋をする
 李花との待ち合わせは、レストランバー。約束の六時半に行くとすでに彼女はいた。

「珍しいわね。真司さんから誘ってくれるなんて」

「確認のためですよ」

 溜め息まじりに李花はメニューに手を伸ばす。

「カクテル飲んでもいいかしら?」

 頷いて、俺も李花と同じものを頼む。

「ロンドンで言ったはずですよね? 俺は君と結婚する気はまったくない。俺の妻は香乃子だけだって」

「ええ。でも彼女のほうはどうかしら。真司さんは、なにも知らないからそんなことが言えるのよ」

 李花はバッグから写真を取り出して並べる。

 写真にはキ喜の前で客と話をしている香乃子が映っていた。別の日と思われる同じような写真も数枚。

「いったいこれがなんだっていうんだ」

「この人に聞いたのよ。あの女との出会いはロンドンですって。すごいわよね」

 怒りが爆発しそうになり拳を握って耐える。

「君はなにがしたくて、こんなことをしているんだ」

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