そして俺は、契約妻に恋をする
 三人目をねじ伏せたとき「あらら」と明るい声がした。

「遅かったか」

 笑っているのは仁だ。

「おっとー」

 逃げ出そうとした李花を仁が捕まえる。

「警察も呼んだからね」

「わ、私はなにも」

「お嬢さん、店の店員にこの薬をチップと一緒に渡したでしょ。彼のドリンクに入れてってね」

 言い返そうとする彼女に俺が言った。

「これでおしまいだ」

 店は仁の後輩が店長をしていて、こんなときのために前もって話をしておいたのだ。店員が俺に合図を送ってきた。

 合図の意味は女が薬を入れようと頼んできたことと、仁に連絡をしたとの二件。

 万が一を考えて準備はしたが、正直ここまでするとは思っていなかった。

「男まで用意しているとはな。恐らく朦朧とした真司さんをホテルに連れ込んで、既成事実を作ろうって魂胆だったんだろう」

「たぶんな。しかし、まさかここまでするとは」

「警察沙汰になればさすがにおとなしくなるでしょう」

 ポンポンと肩を叩かれホッとして息を吐く。

 さあ、帰ろう。香乃子と真倫のもとに。






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