そして俺は、契約妻に恋をする


▼香乃子



「ただいま」

「おかえ……真司さん? ど、どうしたの?」

 スーツが破けていた。パッと見たところ怪我はなさそうだが、明らかに争った跡がある。

 ところが彼自身は笑顔で楽しそうだ。

「全部終わったよ、香乃子。これでもう大丈夫だ」

 実は李花さんからメッセージが来ていたのだ。

【今夜、私と彼は一晩共にするの。
 あとで私たちが愛し合った証拠を見せるから楽しみにしていてね】

 メッセージが来たのは六時半頃で、彼がどこかの店に入ってくる写真が添えてあった。

 真司さんからは夕方、帰りが少し遅くなるかもしれないとメッセージが来ていた。

 私は彼を信じている。会いに行った理由はきっと情報サイトの書き込みの件だと思った。

 間違いなく、あの書き込みは李花さんの仕業だ。

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