そして俺は、契約妻に恋をする
 私が彼女を怒らせたばっかりにキ喜にまで迷惑をかけてしまった。それが悲しくて悔しくて。私さえいなければと一度は思ったけれど、彼女といても真司さんを幸せになれるとは思わえない。問題は私ではなく彼女なんだと考えを改めた。

 でも、相手が私ではなく完璧な女性なら、こうはならなかったのではないか。

『あなたみたいな冴えない女じゃなければ、私だってあきらめたわ。でも、あなた桜井家の名前のほかは英語ができるだけでなんの魅力もないじゃない。そこへんの踏みつけられる草と同じよ。路傍の石ね。壁の華?』

 甲高い声で、あははと笑われた。

 私には彼女のような華がない。

 もう一度真司さんと話をしてみようか。彼女の暴走を止めるためにも、私ではない誰か素晴らしい女性とと再婚を考えたらどうかと。でなければ、彼女の暴走は止められない。

 そんなふうに、あれこれ思い彼の帰りを待っていたのである。

「ばぶー」

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