そして外交官は、契約妻に恋をする
「うん。簡単に言うと一ノ関李花が俺を拉致しようとしたが失敗した。ってところかな」

「えっ……拉致?」

 本人は飄々としているが、拉致と聞いては驚かずにいられない。

「警察が駆けつけ、すべて事情を話した。少なくともストーカー容疑で逮捕されるだろう」

 不意に電話が鳴り響き、スマホを取った真司さんは電話に出た。

「ああ、間違いない。店の防犯カメラで一部始終残っている。相手の男は三人。その場に駆けつけた俺の友人も立ち合っている。だから、うちが問われる心配はないよ、安心して。証拠は全部あるから」

 それだけ言って電話を切った。

「母だよ。一ノ関の家元から血相変えて電話があったらしい」

 ハハッと真司さんは笑うが。

「溺愛する娘が男の監禁を企てたとなれば、ショックだろうからね」

「それはそうですけど、私は真司さんがそんな目にあったことがショックです」

 男三人に襲われたと聞いては、心配せずにはいられない。

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