そして外交官は、契約妻に恋をする
 別れてから初めてのキスは、思ったよりも優しく、そして熱い。

「香乃子、俺が欲しいのは君なんだ。君しかいないんだよ?」

 耳もとで囁かれて、また頬を涙が伝う。

「ごめんな、ややこしいことにしてしまって」

「ううん」

 ふるふると首を振る。

「気づいたか? 俺、君がいなくなって痩せちゃったんだぞ?」

「えっ? 何キロですか?」

 気づかなかった。

「一キロ」

 そ、それだけ?

「大変だろ?」

 プッと吹き出して、あははと笑った。

「ようやく笑ったな」

 真司さんが私をギュッと抱きしめた。

「その笑顔を守るためなら、俺はなんだってするからな」

 真司さん。

 彼は私の涙を指先で拭い、にっこりと微笑む。

「香乃子、愛してる」

 リビングのソファーは、ベッドのように広い。

 キスをしながらもつれ合うように横たえられて、何度も名前を呼ばれながらその声に夢中になっていく。

「もう二度と君を離さない」



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