そして俺は、契約妻に恋をする
▽真司
▼真司
「仁、今日はありがとうな」
「どういたしまして、さあどうぞ座って」
ここは彼の店、レストランバー氷の月。深夜の三時。寝てしまった香乃子をベッドに運んでからここに来た。
平日ならもう閉まっている時間だが、土曜の夜は朝まで開店している。
「落ち着きそうですか?」
「ああ後は弁護士に任せるが、鍵を握っているのはこっちだ問題ない。とにかく矛先が俺に向かってよかったよ。心置きなく叩けるからな」
できるだけ香乃子を巻き込まない方法で片を付けたかった。
「しかし、外交官を拉致しようとは、浅はかというかなんというか」
「なにか飲まされるくらいは想像したが、せいぜいあの場でそれっぽい写真を撮るだけだと思ってたよ。やっぱり武道は習っておかないとダメだな」
「出る幕なかったし。なかなか格好よかったですよ、スーツを翻しての一撃。通行人の女の子たちがキャーキャー言ってたのわかりました?」