そして俺は、契約妻に恋をする
 なんだかんだと家路についたときには、白々と夜が開け始まっていた。

 そっと寝室に入る。

 真倫は今はベビーベッドで寝ている。俺の寝相が悪いからとか理由を並べ、俺たちのベッドのすぐ隣にベビーベッドを置いたのだ。

 理由は香乃子との距離を縮めたかったから。

 服を脱ぎ捨て布団に潜り込む。

 すやすやと眠っている彼女を抱き寄せて額にキスをする。

 それでは飽き足らなくて、首すじや胸もとにも唇を這わせた。これ以上遊んでいると止まらなくなりそうで、あきらめて隣におとなしく寝る。

 俺のベッドに香乃子がいて、彼女のぬくもりがある。それだけでとてつもなく幸せな気持ちが溢れ出した。

「香乃子、愛してるよ」

 囁いて、腕を伸ばし抱きしめる。

 もう離さない。なにがあろうとも。



「という訳で、こちらが念書です」

 明くる日の午後三時。

 すなわち李花が俺を拉致しようとした翌日に一ノ関の弁護士が現れた。

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