そして外交官は、契約妻に恋をする
 周りには私たちのようにピクニックバスケットを広げているカップルもいるし、上半身裸で横たわり日光浴をしている人もいる。休日の公園は平和そのものだ。

 ふと風が吹き抜け、髪を抑えた。

 天気がいいから気持ちいいと思えるが、これで日差しがなかったら少し寒いだろう。

 思わず「ロンドンの冬は早そう」と呟いた。

「そうだな。でも寒さを実感する暇もなさそうだぞ。十二月はレセプションが目白押しただからな」

 シートに座り、両手を後ろに伸ばして支え空を見上げる真司さんは、溜め息をつく。

 彼はお疲れなのだ。

 予想はしていたけれど、連日のパーティーは出席するだけでも結構疲れる。

 精神的にもだが、お腹もだ。各国の大使館での料理は食べ慣れない物も多く、胃腸に負担がかかる。彼のように体力がある人でもこう頻繁では疲れて当然だ。

 なんだかかわいそうになった。

「はい。どうぞ。カボチャの味噌汁ですよ」

 スープジャーを取り出して、
 カボチャと鶏肉、そして青菜が入った味噌汁をカップに注いで彼に渡す。

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