そして外交官は、契約妻に恋をする
「ありがとう」

 にっこり微笑む彼はさっそく味噌汁を口にして、満足そうに息を吐いた。

「カボチャはなににいいんだ?」

「体を温めるし、胃腸を整えてくれるんです」

「なるほど」

 ご飯で育った私たちは、やっぱり和食を前にするとホッとする。

 家で食べる料理は、日本にいたときに食べ慣れた食事や、お腹に優しいものをと心掛けている。ネット通販や日本食を扱うスーパーを利用すればほとんど手に入るので困らない。

 そんなわけでピクニックに持ってきたのは、サンドイッチではなくおにぎりだ。

 おにぎりにしようと提案すると、彼はハッとしたように『いいね』瞳を輝かせた。

 具は塩をふって寝かせておいたサーモンと、自家製マヨネーズを和えたツナマヨ。ちゃんと海苔で包んである。鶏の唐揚げとゆで卵という定番おかずも添えてある。

「バッキンガム宮殿を見ながらおにぎりを食べるとは思わなかったな」

「ほんとですね」

 あははと笑いながら、久しぶりの外で食べるおにぎりは、とっても美味しい。

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