そして俺は、契約妻に恋をする

▽真司



▼真司



 一旦フラットに帰宅し、午後は香乃子のパーティー用ドレスを買いに出かけた。

 彼女は如何様にも化ける才能を持っている。本人は気づいていないかもしれないが、着るものや化粧でガラリと雰囲気が変わる。

 つい先日のレセプションでは、髪をアップにして彼女にしては露出が大きめのシャンパンゴールドのドレスを着た。
 彼女は恥ずかしそうにしていたが、
 フィッテングルームでそのドレスを着た彼女はハッとするほど綺麗で、俺が強引に薦めたのだ。

 だが、漂う色香に酔ったのは俺ではなかったのである。
 俺が大使と話し込んでいる間に、気づけば彼女は酔った男二人に絡まれていた。

 慌てて駆け寄り彼女を抱き寄せ、男たちに強く抗議した。
『What do you want with my wife?』

 俺はどうして彼女にこんなドレスを薦めたのか。
 自責の念に苛まれたところでもう遅い。

 もう二度とあんな思いはしたくない。
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